10月1日から『適格請求書等保存方式(以下、インボイス制度)』が開始され一週間ほどが経ちました。
この一週間のうちに色々な買い物をしたわけですが、大抵のレシート等を見ると概ね登録番号が記載されていました。消費税が導入されて以来の大きな改正ですので、今後色々なトラブルも予想されますのでしっかりと情報を集め皆様に発信をしていければと思います。
今回は皆様が適格請求書(以下、インボイス)を受取った時の注意点を簡単ではありますがまとめていきます。
目次
1.インボイス制度が始まって変わること
2.インボイスを受け取った時の確認事項
3.クレジットカードなどで決済した場合
4.インボイスの保存に関して
1.インボイス制度が始まって変わること
インボイスとは、登録した事業者が『売手が、買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための書類』をいいます。
そもそもなぜインボイス制度を導入しなければならなかったのかというと令和元年10月以降に導入された食料品等に対する軽減税率によって消費税率が複数税率となったことが要因です。
単一の税率制度のままであれば問題なかったのですが、2つの税率が混在してしまったが故に正確な適用税率を買手に対して正確に伝える必要が生じてしまいました。
では、インボイス制度が始まって何が変わるのか。変わることは次の2つです。
- 売手側⇒登録事業者の場合には、インボイスの発行(修正)義務と保存義務
- 買手側⇒受領したインボイスの保存が仕入税額控除の要件となる
- *仕入税額控除とは、消費税の納付金額の計算で受取った消費税額から支払った消費税を差引くことをいいます。
10月1日からの取引に関しては売手側も買手側もインボイス制度に則した対応をしていかなければなりません。
2.インボイスを受け取った時の確認事項
インボイスとは、次の事項が記載されている書類を言います。
- ①インボイス発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
- ②取引年月日
- ③取引内容(軽減税率の対象品目である場合にはその旨)
- ④税率ごとに区分した税抜価額又は税込価額の合計額及び適用税率
- ⑤税率ごとに区分した消費税額等
- ⑥書類の交付を受ける方の氏名又は名称
- *小売業、飲食店業、タクシー業などの一定の事業者の方は④、⑤はどちらかを記載し、⑥は省略可
買手側は、自身が受取ったインボイスに関しては、①~⑥の内容が書かれているかをまずは確認をして下さい。①~⑥の事項が記載されていればどんな書式でもかまいません。
なお、記載事項に不備等がありましたら売手側に再度正しいインボイスを発行してもらうようにしてください。
また、インボイスに記載されている登録番号の確認方法につきましては、適格請求発行事業者公表サイトにて確認することが出来ます。
この登録番号の確認に関しては国税庁が公表しています『インボイス制度の開始に向けて特にご留意いただきたい事項』に記載されていますが、全ての取引の都度、登録番号を確認せずとも問題はないとのことです。
3.クレジットカードなどで決済した場合
最近では、クレジットカードのみならず色々な方法のキャッシュレス決済の方法があります。
クレジットカード会社が利用者に交付している利用明細書につきましては、カードの利用履歴をまとめたものです。
クレジットカードの利用明細は、取引先が交付するインボイスではありません。令和5年9月30日以前であれば、3万円未満の取引については帳簿に一定事項を記載し保存することで仕入税額控除が適用されましたがインボイス制度の導入によりこの取り扱いは廃止されましたので必ずインボイスを受け取るようにしてください。
4.インボイスの保存に関して
インボイスの保存義務が免除される取引を除いては、金額の多寡に関わらずインボイスの保存がない場合には、原則的に仕入税額控除を受けることが出来ません。
保存義務が免除され、帳簿のみの保存で仕入税額控除が受けられる取引は以下の通りです。
- ・支払金額が3万円未満の公共交通機関への支払い
- ・古物商や質屋等を営む事業者が古物、質物等を仕入れる場合(別途古物台帳等の保存が必要)
- ・従業員等への日当や通勤手当等の支払い
- ・支払金額が3万円未満の自動販売機、自動サービス機(ATM等)での支払い
- ・インボイスの記載事項のある入場券等が回収されてしまう場合
- ・郵便ポストに投函した切手代
上記の取引以外の場合は原則的にインボイスの保存がない場合には仕入税額控除を受ける事は出来なくなります。ただし、開始から数年間は緩和措置もあります。
最近では、書面の領収書や請求書が交付されない場合もありますので、一度確認が必要です。
さて、インボイス制度が開始されて一週間程度が経ちました。まだまだ開始して間もないということもありご相談をいただく件数も多くはありません。
ただ、私が知らないだけで現場では多くの混乱を招いているかもしれません。年々税制が複雑化していますが今回のインボイス制度はそれに輪をかけて複雑になっています。
インボイスの保存に関してのところで少し触れましたが、最近では書面でのやり取りが少なくなりつつあります。ECサイトでのショッピングなどでは取引情報のやり取りは電子メールで行います。インボイスの保存は書面だけではなく電子データでも同様です。
今後益々デジタル化の流れは進んでいきます。登録する人・しない人、対応出来る人・出来ない人の分断を更に生まないかということがとても心配になります。